仕事による過労で亡くなった場合には、遺族は、労働基準監督署に対して労災の申請をすることができます。労災と認められれば、労災保険から給付を受けることができます。
労働者を一人でも使用する事業所(使用者)では当然に保険関係が成立し,適用事業所に勤務する労働者はすべて労災保険の対象になります。したがって、使用者が労災保険料を支払っていなくても,労災保険給付を受けられます。
会社は、労災申請書類に必要な証明を求められれた場合には、法律上、速やかに証明をしなければなりません(労働者災害補償保険法施行規則23条)。
しかし、会社が協力してくれないことはあります。そのような場合でも、申請を行う権利は、労働者またはその遺族の固有の権利ですので、会社の承諾なくすることができます。実務上は、会社が協力してくれない旨の上申書を添付すれば、労災申請をすることができます。
(労働者災害補償保険法施行規則)
第23条 保険給付を受けるべき者が、事故のため、みずから保険給付の請求その他の手続を行うことが困難である場合には、事業主は、その手続を行うことができるように助力しなければならない。
2 事業主は、保険給付を受けるべき者から保険給付を受けるために必要な証明を求められたときは、すみやかに証明をしなければならない。
①労働基準監督署に対して労災の申請→→→労災の支給決定
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↓労災の不支給決定
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②労災保険審査官に対して審査請求→→→認容決定(労災の給付あり)
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↓棄却決定(労災の給付はなされません)
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③労働保険審査会に対して再審査請求→→→認容裁決(労災の給付あり)
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↓棄却裁決(労災の給付はなされません)
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④裁判所に対して訴訟を提起
※①での「労災の支給決定」、②での「認容決定」、③での「認容裁決」がなされると、労災の支給がなされることになります。
労働基準監督署の決定は覆せる可能性があります。
この場合、すぐに裁判所に訴えることができず、原則として、各都道府県労働局にいる労働者災害補償保険審査官に、今回の不支給決定の取消しを求めていくことになります。これを「審査請求」といいます。「審査請求」は、今回の不支給決定を知った日の翌日から起算して60日以内に行わなければなりません(平成28年4月1日からは上記60日が3か月に改正されます)。この期間を過ぎてしまうと、原則として「審査請求」ができなくなってしまいますので、注意が必要です。
「審査請求」を行ってみたものの、納得いく結論が得られない場合もあります。この場合には、原則として、厚生労働大臣の所轄下にある労働保険審査会に今回の不支給決定の取消しを求めていくことになります。これを「再審査請求」といいます。「再審査請求」も「審査請求」の決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して60日以内に行わなければならず、注意が必要です(平成28年4月1日からは上記60日が2か月に改正されています)。
「再審査請求」を行ってみたものの、納得いく結論が得られない場合に、最後の手段として、裁判所に訴えを起こすことができます。
労災保険では,慰謝料は支給されません。また,休業補償も平均賃金の6割の支給であり,損害のすべては補償されません。つまり、労災事故に関し,使用者に安全配慮義務違反があれば,使用者に対して損害賠償請求することができます